とれたて猪ハツ&レバー
夕方 「グリーンツーリズム講習会in吾妻」から帰宅して、すぐさま一本の電話が入った。
「猪とれたから取りぃ来お!」
先日連絡先を交換した、狩猟名人のヤマニさんからだ。
「行く行く!いますぐとんでぐ!でも、私獲るのになんにもしてないのに良いの?」
「良かんべ!」
「あの、いま中之条だから1時間くらいかかっちゃうけど…バラシ終わっちゃうよね?!」
「まぁな」
「くやしーー!でもすぐ行きます!」
こうして、今夜は空手をすっぽかして、バラシ場のある和光原へ向かった。
50分後に着いた時には、解体は終わっていて残滓もきれいに片付けられた後だった。
残念だなぁと思いつつも、次もまた呼んでもらえるそうなのでめげない。
これは後で自分で精肉したイノシシ。スキナーでサクサク筋膜をはがすのが気持ちいい。
ほれ、と渡された肉は、まだ生温い。ずっしりと重く、1キロはある。
「レバー食ったことあるか?」「な、ないです!」
その場で、とれたてイノシシの、ハツとレバーを焼いてもらうことになった。
塩こしょうをして焼いた熱々をぱくり。…うますぎる。
レバーは、桁違いの鮮度で生臭さが全くない。うまい、うまい。
ハツはコリコリ。噛みごたえのある横紋筋が、口の中で躍る。えー、普通の肉なんか目じゃないくらい旨い。
男衆の皆さんはあまり食べず、一人でほぼ一匹のイノシシのレバーをまるまる食べてしまった。もう、そのほかにも美味しいものが次々と。
イトウリ。種をとって茹で、中身をほぐすとこうなる。らっきょ酢と醤油で旨い。
茹でた落花生、はちみつとおやき、醤油漬けキャベツ(ブドウっぽい酸味がした)、なめこの出汁七味煮…しそジュースはしゅわしゅわしてサッパリ!
あんまりぱくぱく食べるので「うまそうに食うなぁ」と言われてしまった。本当に美味しくて。遠慮することが失礼なくらいうまいんですもの。
バラシ場を提供してくれているタツオさんの奥さん、めちゃくちゃ料理が美味い。味を盗みたいのでしっかり食べて、味付けの質問攻めにしてしまった。
「このなめこ、ずいぶんしっかりダシでてるけど本だし?」「あぁ」
「このおやき、ちょっと味噌入ってる?牛乳だけ?卵無し?」「あぁ」
食べたまま聞いてみたら、全問正解!という感じで嬉しくなった。食べてしっかりと分かるほど素材を生かしている、素朴で真実な旨い飯なんだと思った。
こういう料理で、もてなしたい。
我流グリーンツーリズム「狩猟民宿」やります。
ほうぼうに吹聴はしますが、失敗したくないので地道に地道に準備をすすめます。きっと先になります。でも、私は、六合にある宝物を生かして、自分の身体に合う六合で、好きな仕事をやりたいのです。
地元の人ほど「六合はなんもねえぞ」と言う。今夜も、タツオさんの奥さんが言っていた。
私はそれに対して、しっかり反論してきた。
「六合は良い物いーっぱいありますよ!それこそ都会の人が喜んで遊びに来るような。野反湖も野菜も伝統も工芸も民話も狩猟も、こんなに美味しいものも」
理解を得ることは難しいんだろうなとは思うけれど、成果を上げれば大体の人は分かってくれるだろう。だから、じっくり準備をする。
ああ、イノシシのハツのおかげで心臓に毛が生えちゃいそうな夜だ。
最後の一口のレバー、ガッツリ生焼けだった。
「あれ、イノシシのレバーは生だと危ないんでしたっけ?ま、食べれば覚えるか。大丈夫じゃなければ忘れないものね!あっ、生焼けでもウマ!」
と言いながら食べた、今夜の自分を明日呪うかどうか。楽しみである。