つくって食べて熊鍋集会の夜1(食べ物編)
この連休、久しぶりに熊を煮る機会を得られた。
群馬県の北西端、六合(くに)山岳会の若手メンバーを中心に、山肉を囲む会を楽しんだ。山岳会で自然を楽しむのはもちろんのこと、林業に従事したり、自然写真を撮ったり、狩猟したり、山の恵みを様々に受け取っている我々は、もちろん山の美味しい物も食べたいタチなのである。
真空パックされ、T夫妻の冷凍庫に眠っていた小熊を揺り起こし、美味しい熊鍋にしてやるのが今回の私の使命だ。山肉料理の腕前を振るうために、大きいアルミ鍋にこだわりの味噌、調味料などの道具一式を持参して、まるで料理のケータリング屋のような大荷物で、T夫妻のおうちにお邪魔した。
14時に集合して、まずは前日に燻した「野生の豚と養殖の豚食べ比ベーコン」をつまみに発泡酒でカンパイする。
左がイノシシ、右が豚。
まず、豚バラ肉のベーコンを口に放り込む。意外と美味しい。ポン酢と粉がらしをつけて香りの抜けを楽しむ。
次にイノシシのベーコン…これは後ろ足のたっぷり良い肉が付いているところなのだが…なんという深い味だろう。まだ脂肪がつく前の初秋のイノシシで、サッパリとしていて美味い。ハーブの香りと獣の臭みが調和して、もはや臭みではなく風味としての格調を備えている。一口放り込むたびに幸せが訪れる。驚異。
H子さんのおみやげ、群馬の名産おかいこさんチョコレートもたべた。外の桑の葉を持ってきて、そこに乗せて撮影会も楽しんだり。
各々掴みを取ったところで、みんなで熊鍋づくりに。「ぜひ作り方も知りたい!」というリクエストだったので、肉の取り方から野菜の切り方、味付けまで余すことなく全部オープンにした。これをもとに、各人のアレンジで美味しい熊鍋を編み出してもらえたら嬉しい。
まず材料
野菜類:大根、じゃがいも、ごぼう、しめじ(好みのきのこ類)、ねぎ、にんじん
肉:熊
具:こんにゃく、とうふ
味付け:味噌、醤油、粉末だし(あごだし、こぶだし。ほんだしでも構わない)
さいしょに、ネギ以外の野菜を大きめに切って、鍋にがっつり入れる。大根とにんじんを大きい乱切りに、ゴボウを厚みのあるささがきにするのがポイント。
こんにゃくも先入れ。出汁がでる。こんな感じで、ぎっしりいっぺんに入れてしまうのもコツ。
次に熊肉を取る。
今回は冬の小熊でたっぷりと脂がのり、とてもやわらかい肉で非常にうまい肉だといえる。この最高の肉をしっかり美味しく食べるため、肉の切り方にもこだわる。
やわらかさと脂の香りを楽しむため、赤身と脂身を剥がさないように、肉の繊維に対して直角に、脂身側から刃を入れていく。厚みは刺身ぐらい。縮みがすくなく、やわらかい歯ごたえを楽しめるし、口に含んだときにとろける脂肪のあとに、赤身を噛みしめるととても幸せになれる。
鍋に焦げ付かない程度に半量ほど水を入れ、一番上に熊を乗せる。出汁を振り入れて中火で煮込み、途中に醤油を塩気がつかない程度に入れて具材全体の臭みを取る。芋に火が通るまでビールとワインを飲んで待つ。
芋にさっと火が通ったら、味噌を少しずつ加えてコクをだし、これだ!という味になったらネギと豆腐を加える。ここで、なんとなく足りないかな?と思っていた甘みが十分に引き出され、熊の脂にも甘みがのる。
ネギがまだ青く、しかしよく火が通っているところまで来たら火をとめ、最後の香り付けに醤油を少量たらす。
これで完成だ。あとはストーブの上にでも置いて、あたためながら皆でどんどん食べれば、30cmの大鍋が一つ空になっているだろう。
もうこのあとは6時間飲んだり食べたり話したり。最高の団らんの時間を楽しんだ。
むかごご飯も炊いてもらい、お椀によそって熊鍋をかけてかきこむのもめちゃくちゃおいしい。熊鍋は饂飩より米が合うと思っている。
あんなに食べたのに、H子さんのシフォンケーキと、私のカボチャプリンでデザートも食べたし…。
一晩で熊1.5キロほどを平らげた5人衆の感想は、嬉しい物ばかりだった。
「熊鍋はもっと味が濃くて、甘かったりしょっぱかったり固いという感覚しかなかったけれど、薄味で美味しくまとまっているからいくらでも入る…」と全員が喜んでくれたので、私は感無量だ。
熊鍋集会の夜2 へつづきます。