初体験・イノシシの解体
日曜日の朝、狩猟名人のヤマニさんから電話をもらった。
「今朝イノシシ獲れたが、解体来れるか?すぐばらさねえから」
二つ返事ですぐさま家を飛び出した。今日も美味しいイノシシが食べられる!いよいよバラシができる!そんな期待で胸いっぱいになりながら、雨の中車を走らせる。
バラシ場までの移動に1時間かかるため、今回も皮剥には間に合わなかった…。解体からは参加できたので、そこからの工程をメモしておく。
全ての工程は、二枚のすのこを浅いV字に組んだ作業台の上で、ホースの水で血を洗いながら行われる。
このバラシ場では、まず皮剥ぎから始めている。一般的には臭みを抑えるため、放血やモツ抜きを初めに行ってから皮剥する場合が多いが、ここではすぐ屠りすぐ食べるので、そこまで気にしないようだ。
※解体の手順と様子(写真は記事下段に掲載する)
皮剥も含め、1時間で終了した。今回のイノシシは左脇に弾が中(あた)ってしまい、腹の中で見事に胃が爆発していた。内容物は殆どがドングリか栗と思われる物で、すりつぶされて胃に収まっていた。10キロポリバケツに山盛りになるほどの量で、今年はいかに山の実が豊富かを表している。えぐみと酸味が混じった臭いが強烈だった。
下あごには青い草もついており、食欲旺盛なこの時期のイノシシの生態を垣間見ることができた。
胃の内容物が溢れてしまったのと、腹に受けた傷の汚血で、少し肉にクセがついてしまった。肉質自体は良い物だったので残念だ。若いメスで、ピンク色の良い色をした柔らかい肉、最高だったろうに。ちなみに、年寄りになると肉が黒ずんで固い。
今回は解体の補助と、肋骨の間の肉を削ぐのをやらせてもらった。最初は、包丁のように引きながら切っていたが、狩猟刀は押し当てるだけで切れる。
「引かなくても骨に沿って刃を落とすだけで切れるぞ」と教えてくれたヤマニさんは、さすが名人だ。的確なアドバイスをくれた。この人についていって、六合流の狩猟をしっかり教わっておこうと思う。
取れたリブロース。細長い肉が取れる。一頭から取れる量は少ないが、柔らかくて美味しい。
無事に解体が終わって得た肉は、帰ってすぐさま筋膜(スジ)を剥がす。一日経つとどうも剥がれにくい。血抜きをしていない分あとから滲んでくるので、良く洗ってキッチンタオルで拭き、ジップロックに入れて低温氷結させる。
こうすると、やわらかく鮮度の高い状態で保存できる。
切り取ったスジは捨てず、臭みが集まっているようなところなのでカレー塩で臭みをとり、酒と醤油で下味を付け、牛すじ風味噌煮込みにした。
冷蔵庫にあったエリンギとパプリカを投入。たいてい何入れても美味しいもの。
★イノシシ解体の工程★ ~皮剥のあとから~
1. イノシシの足先を切り落とす
2. 前足・後ろ足をそれぞれ付け根から切り落とす。刃は脇から入れる。全身の解体をしている間に、別の人が足の肉を削いで分けておく。
3. 頭と胴体だけになったところで、肛門の周りを切り抜き、腸が体から離れるよう処理しておく
4. 一人がイノシシを仰向けに支え、もう一人が肛門近くの腹側から、喉もとに向かって腹を割く。刃は内臓を傷つけないよう天に向ける。
5. 食道をを切り取り、内臓を体から取り去る。一人が頭をもって押さえ、もう一人が下へ向かって内臓を引っ張り出す。このとき、両手をショベルカーのように構えて肺と心臓をしっかり包み込み、上から下へと内臓を引っ張って剥ぐ。抜いたモツは、心臓・肝臓・腎臓を水で洗って取り分けておく。ここは食べられる。
6. モツ抜きができたら、後背部から肉を削いでいく。肋骨を開いた端から刃を入れ、背中へ向かって肉を剥いでいく。一人が肋骨を持って支えていると、背中部分を肉を削ぐときにやりやすい。左右に分けて行う。
7. 頭と胴を切り離す。ほほ肉を取る。
8. 肋骨の間の肉を取る。骨のすぐ横から指して肋骨の先端側に向かって数センチの切れ込みをいれ、そこから骨に沿って刃を下に動かすときれいに削げる。
9. 肉がほとんどとれたので、骨の解体をする。腹側から、背骨の外周に沿って刃を入れる。その切れ目から肋骨を折り取るように外す。左右それぞれ行う。
10.背骨を適当な大きさにぶつ切りにする。
解体終了!
★写真★
ほとんど食卓に出される肉に近い状態の写真しか載せていません。
一人が刃を入れる方と逆の方向に向かって押さえているとスムーズに作業が進む。しかし息が合わないとダメ。私も息を合わせられるようによく見ておく。
こちらでは別作業で足を切り分けたり、大きく取れた肉を切り分けてくれる。
綺麗になった骨。出汁がでるのでスープへドボン。水から煮る。うまそ~
解体の御指南、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!